◎エチオピアの楽器について

エチオピアでは80以上の民族がそれぞれが異なった言語や文化で生活を営んでおり、多種多様な音楽文化とそれに伴う楽器が多数存在している。また、エチオピア正教(エチオピアで独自に発展したキリスト教の一種)の影響から、宗教的な意味合いを持つ楽器も多い。
さらに竹が自生していることや山岳地帯・多雨などの特異な自然環境からか、他のアフリカ諸国に比べて太鼓類が少なく管楽器が多いというのも大きな特徴もある。
(投稿:2016/3/23 更新:2016/5/9)

 

 

弦楽器

・ベゲナ(begena、በገና)

IMG_214110弦の大型リラ。旧約聖書のモーセの”十戒”にちなみ、10本の弦が張られたと言われている、非常に歴史の長い楽器である。もともとは貴族の楽器として、瞑想や祈りの際に弾き語りのスタイルで演奏されていた。
演奏者はベゲナを体の左側に床と垂直になるように構え(大きさによってベゲナをそのまま床に置いたり、台の上に置いたりする)、右手でボディやネックを抑えながら、左手のみで弦をはじいて演奏する。
1曲中に全ての弦を弾くわけではなく、5〜6本の弦のみをアルペジオで演奏する。エチオピアにはTizita、Bati、Ambassal、Anchihoy等、様々なスケールが存在し、ベゲナ全体のチューニングやどの弦を弾くかというのは、演奏する曲のスケールやキーによって異なる。
また、それぞれの弦とブリッジの間に革製の小さな片が挟んであり、これがいわゆる”サワリ”のような役割をしているため、特徴的な振動音を得ることができる。

 

・クラール(krar、ክራር)

IMG_2141 (1)ベゲナと形状が似ているが、こちらは弦が5〜6本しかなく、ベゲナよりもはるかに小型で、左脇で抱えるようにして構える。
左手で弦を弾く奏法もあるが、基本的に演奏にはピックを使い、左手の各指で出さない音の弦をミュートしながら右手で全ての弦をストロークする。このとき5弦クラールの場合は5本の指全てを使えば自在にミュートが可能だが、6弦クラールの場合は親指の腹と第一関節を使って同時に2本の弦をミュートする。
チューニングはベゲナ同様、曲によって様々なチューニングに変わるのだが、エチオピアのスケールは基本的に5音なので、6弦クラールの場合は2本の弦が同じチューニング、ないしはオクターブチューニングになる。
エチオピアの伝統品を扱う観光客用の店では土産品として置いてあったり、ピックアップ等を取り付けた”エレキ・クラール”も存在するなど、比較的ポピュラーな楽器。

 

・マシンコ(masenqo、መሰንቆ)

IMG_13421弦の擦弦楽器で、アズマリ(カザンチス地方に多数存在するアズマリ・ベットという酒場で即興の弾き語りを披露する音楽家たち)が歌唱と共に使う。
多くのリュート属の楽器と異なり、フレットに弦を抑えつけるのではなく、5本の指を大きく開き、弦を横から抑えるような形で音程を変える。
ペグは三味線と同じような仕組みで棒に巻きつけて固定する。
弓と弦はどちらも馬の尾を束ねたもので、ボディはひし形の木の枠にヤギの皮を張って作られている。
実際のアズマリでは、後述するカバロと共に歌の伴奏として使われる他、カバロが休みのパートで、歌(というより語り)の合いの手で速くて短いフレーズを入れることがある。

※アズマリベットでの実際の演奏(歌、マシンコ、カバロ)

 

・ドゥル(dul、ዱል)

ガンベラ地方で見られる弦楽器。横長の箱のようなボディをしているリラ。

 

・ディタ(dita、ዲታ)

シダモ地方で見られる5弦のリラ。

 

管楽器

・ワシント(washinto、ዋሽንት)

IMG_2528ブルガリアのカヴァルやトルコのネイ等と同じく歌口に切れ込みや加工が一切無い”End-blown flute”の一種。
歌口の中心にそのまま息を吹き込むのではなく、ワシントを斜めに構えて縁の部分に息を当てるようにして音を出す。息遣いなどにより非常にバリエーション豊かな演奏が可能だが、その構造から音を出すのが非常に難しい。
素材は竹製のものが多いが、金属片を加工して作られたものもある。基本的には4穴の楽器だが、10穴のワシントも存在するとのこと。
奏者が年々減ってきていて、都市部ではワシントを吹ける人はかなり少ない。

 

・エンビルタ(embilta、አምቢልታ)

IMG_2143ティグレ族等が冠婚葬祭で使う1mほどの笛。
全く指穴の無いただの筒のようなエンビルタの他に、1つだけ指穴のあるものや、歌口と逆側がベル状に広がっているものも存在する。
ワシントと同じように縁に息を当てて音を出すが、こちらは音程のバリエーションが無いため、複数人でグループになって演奏するのが一般的である。
1993年にエチオピアから独立した隣国エリトリアでもよく使用されている。

 

 

 

・デンケ(denke、ድንኬ)

ワライタ族が使う竹製の細長いトランペット。指穴が無く、複数人でそれぞれ異なった音を出し合う。

 

・フルドゥドゥワ(hulduduwa、ሁልዱዱዋ)

動物の角で作られたシダモ地方の笛。世界的にはショファー(Shofar)と呼ばれ、ユダヤ人の儀式の際に用いられていた。
エチオピアではマシンコや打楽器などと一緒にアンサンブルで演奏されることもある。

 

・ファンファ(fanfa、ፋንፋ)

パンフルートのような形状で、異なる長さの管が横一列に並べられた管楽器。ガモ・ゴファ地方やコンソ地方等、エチオピア南西部で見られる

 

・マラカット(malakat、መለከት)

大きなもので3mほどもある指穴の無いトランペット。アフリカで広く分布しており、スーダン等ではワザ、ガーナやブルキナファソ等ではカカキと呼ばれている。その他エチオピア内の各民族間で若干呼び名が異なる。

 

・アワザ(awaza、አዋዛ)

ワラガ地方の管楽器。

 

・ポラレサ(poraresa、ፖረሬሳ)

エチオピア北部(現エリトリア、デブブ地方)の楽器。

 

・シャマト(shamato、ሸመቶ)

エチオピア南西部カファ地方の楽器。

 

・フラ(hura、ሁራ)

エチオピア南西部カファ地方の楽器。

 

・ザケ(zake、ዛክ)

エチオピア南西部カファ地方の楽器。

 

打楽器

・カバロ(kabaro、ከበሮ) IMG_2155

儀式などで使われる大型の太鼓。手で演奏する。
アズマリで使用されるカバロは形状がより円筒形に近く全く違う形をしているが、そもそもアムハラ語で太鼓のことをカバロと総称しているため、名称の区別はあまりない。実際、次に紹介するネガリットもカバロと呼んでしまうことがある。

 

・ネガリット(nagarit、ነጋሪት)
IMG_2148

木でできたボウル状のボディに動物の皮を張った片面太鼓。先の曲がった棒で叩く。
大きさは15cmほどの小さいものから、60cm以上の大きなものまである。土産品として売られていることがある。

 

 

・シャナシェル(shanasher、ፀናፅል)

IMG_2294古代エジプトの壁画や彫刻にも登場する”シストラム”という楽器がエチオピアに渡ったもので、儀式の際に用いられる。
僧侶が大勢で歌いながらゆっくりと振って音を出す。

 

 

 

・ガレ(gare、ጋሬ)

IMG_2141ガンベラ地方の楽器。足に巻きつけて使用する。

 

 

 

 

・ゴルバン(gorban、ጎርባን)

IMG_2147 (1)バール地方の打楽器

 

 

 

 

 

・マクヮミヤ(maqwamiya、መቋሚያ)

修道士が祈りの際に使う楽器。楽器というより杖そのもので、シャナシェルと一緒に手に持って、地面を吐いて音を出す。主にリズムキープをするような役割を果たしている。

 

・アニード(aneedo、)

アニワ族が使う小型の太鼓。スティックと手で演奏する。

 

・オドーラ(odoola、)

アニワ族が使う中型の太鼓。スティックと手で演奏する。

 

・ブール(buul、)

アニワ族が使う大型の太鼓。スティックと手で演奏する。

 

・ギンギラテ(gingilate、ጊንጊላቴ)

木琴のような鍵盤打楽器。

 

・ケレ(qere、ቅል)

ひょうたん型の楽器。

 

・チャンチャ(chancha、ቻንቻ)

ガモ・ゴファ地方の楽器。

 

・トモ(tomo、ቶሞ)

ガンベラ地方の打楽器。

 

・ダワル(dawal、ደውል)

金属製のベル。

 

・カッチェル(qatcher、ቃጭል)

金属製のゴング。

 

・ヤグマル カッチェル(yagmer qatcher、የግመል ቃጭል)

詳細不明。

 

・アタモ(atamo、አታሞ)

詳細不明。

 

・カマバ(kamaba、ካመባ)

詳細不明。